赤い夏休み

暑い日だった。歩いた。髪を切った。銀行に行った。ヒマな友人達に捕まった。歩いた。担々麺を食べた。ゲーセンをうろついた。歩いた。友人の家に行った。麻雀をした。サイコロを6コ振った。123456を出した。歩いた。晩飯を奢ってもらった。帰った。暑い日だった。

一日中、「明日から仕事だなあ」と思っていた。今日の空気はゆっくりすぎた。何かが終わるような気分がした。夏休みは、もう死ぬまで終わらない、わかっているけれども、今日できっと何かが終わったのだと思う。そしてまた明日からの日々が始まって、別に何も変わることもなく、日々は永遠に続くけれども、記憶がひとときに全部死んだみたいで、記憶の前景はそのまま、背景の色だけが全部塗り替えられたようで、赤ばかりが脳裏を占めているのだけれど、その赤が朝焼けの赤なのか夕暮れの赤なのか、全く分からずに、自分が人生の何処に居るのか分からずに、ただ今は赤の中に居る。夜は赤みがかった黒、夢は赤みがかった闇、朝は赤みがかった記憶の中に。