はてな的「コミュニケーションのコンテンツ化」


はてな人力検索サービスから始まっているということからも、サービス提供側は人力検索以外のサービスについても“サービス利用者を人的リソースとして活用するにはどうすればいいか”という視点でサービスの導入及び改良を行っていると言えます。これは、旧来のレンタル日記サービスとは一線を画す志向性だと思います。

そのために行うユーザー囲い込み戦略の方向として、ユーザーが自ら積極的にサービスのガイドラインに沿って価値あるコンテンツを生み出すように、「利用者意識」を「参加者意識」へと変化させるような方向を取るのは最善で、つまりそれはユーザー同士が繋がるように誘導して連帯感や内輪感を持たせるようなシステムの構築ということになります。

では実際にそうして生み出されるコンテンツとは何かと言うときに、各ユーザーが書く日記の文章そのものがそのまま価値あるコンテンツとなるとはここではおそらく想定されていません。コンテンツとして利用することを想定されているのはユーザーの「選択眼」のみであると思います。つまり、各ユーザーがそれぞれの価値観や交友関係に基づいてクリッピング的に情報を取捨し、日記を書きますが、その日記記述から各ユーザーもしくはユーザー総体の情報の選択傾向を抽出して得られるデータにこそ価値があるのです。ダイアリー以外のサービスにも同様の指向性があると考えられます(フォトライフは純粋にユーザーの利便性に関するサービスだと思われるので除く)。

特にシステム的に優れて効果的かつデータ利用に実用的なのはもちろんキーワードリンクシステムです。ユーザーがキーワードを作成し、ユーザーが説明文をブラッシュアップし、そのキーワードに言及した日記記述が全てキーワードページからリンクされ、また日記からのキーワードリンクによって言及したユーザー同士は接続され連帯感や内輪感を持ち、そのキーワードを知らなかった他のユーザーのキーワード認知度は上昇する、という、もうこれだけでおなかいっぱいなシステムになっています。しかも、運営側が労力をかけるのは管理することに対してだけでよいので、運営側の目的からすると最小の労力で最大の効果を上げられるシステムだと言えます。

実際の事業としての動きを見ると、CCCとの提携のことからもそのようなデータ利用の傾向が窺えますし、より直接的な「はてなクリック」という事業も始まったようです。商用宣伝(的なキーワード作成)の禁止という規則も、このような利用の仕方との兼ね合いが想定されていたからだと考えるのが自然です。

こう考えると、はてなユーザークリッピング的に短文エントリを書きがちなことも、馴れ合い的なコメントを日記同士でしがちなことも、うなづきトラックバックを打ったりしがちなことも、システム的に指向されていることであって、そのようにはてなシステムを利用しているユーザーは運営側の意図を正しく読み取っているとすら言えるのではないかと思います。言い過ぎかな。言い過ぎかも。

コミュニケーションのコンテンツ化ってこういうことなのかなあと思ったのでした。対企業的な意味で。