夜空に浮かぶひかりのまち

帰りしなのバス待ちのときに、久し振りに空を見上げてみた。六分の月を薄い雲が撫でるように流れていた。
この街は明るすぎて、夜の空を見上げても星なんかひとつも見えなくて、まっくらでうすあかるい水底にひかる月が沈んでいるようで。
そんなこの夜の空を見上げると、胸や首といっしょに心も伸びて、からだじゅうに覆い被さっていた疲れや不安が、深い向こうへ落ちてゆくような気分になる。
そうして、また明日も生きてみようかな、と、素直に思える。

空に救われる。別に優しくもない空に。